陰陽論  

 

 陰陽論(陰陽理論)とは,大昔の人が自然を理解するための,世界観と方法論であります。

陰陽学説は,世界は物質でできており,陰と陽の2つの気の相互作用によって,生まれ,発展し,そして変化しているとしています。

 

1.陰陽学説

  当初考えられていた陰陽の意味は非常に素朴なものでした。

太陽の光を受けたとき,日のあたる面を陽,日のあたらない面を陰としただけでした。

その後,気候の寒暖,方位の上下・左右・内外,運動状態の動と静などと拡大されていきました。

大昔の哲学者は,全てのものには正・反の両面があることを見て取り,陰と陽の考え方で,

自然界の二種類の互いに対立・消長するものを説明し,またこの対立・消長はそのものに固有であると考えました。

『老子』‘万物は陰を負い,陽を抱く’

さらに陰陽の対立・消長は宇宙の基本法則であると考えました。

『易伝』‘一陰一陽これを道と謂う’

  陰陽とは,自然界において,互いに関連するものと現象が対立することを,大まかに述べたものであります。

つまり対立と統一を含む概念であります。陰と陽は,互いに対立するものごとを代表し,

かつ一つのものごとの内に存在する,互いに対立する2つの方面を分析することができる。

『霊枢』‘陰陽,名あれど形なし’

『類経』‘陰陽,一つを二つに分ける也’

  自然界のすべては物質からなり,自然界そのものも陰と陽,2つの気が対立・統一した結果であります。

『素問』;‘清陽は天になり,濁陰は地となった;地気が昇って雲になり,天気が下りて雨となる。’

 

2.陰と陽の分類例

積極的

攻撃

肉体

外側

奇数

利益

味方

消極的

防御

精神

内側

偶数

損失

 

 

3. 陰陽学説の基本的内容

(1) 陰・陽は互いに対立・制約する。

(2) 陰・陽は互いに依存し,単独では存在しえない。

(3) 陰・陽の消長と平衡。

(4) 陰・陽の相互転化。

 

4.太極図(太極マーク)

右図は太極図(太極マーク)と言います。

白い部分、と黒い部分を魚に見立てて「陰陽魚」とも呼ばれています。

また、もともと「陰陽儀」だったのが、発音が近いため「陰陽魚」になったとの説もあります。

また、当初は「天地自然河図」と呼ばれていました。

右図で白い部分は、「陽」を表し、黒い部分は「陰」を表します。

大きな白い部分の中に、黒い点がありますが、「陽」の中に「陰」があることを表します。

同様に、大きな黒い部分の中に、白い点がありますが、「陰」の中に「陽」があることを表します。

「陰」と「陽」は上記3.の性質を表現しています。

 

 

5.補足---宇宙生成の機序

陰陽論は宇宙の起源に由来しているといわれています。以下にその機序を説明いたします。

まだ宇宙が生成されていないとき、それはなにもない「無」の状態でした。

「無」はまさになにも存在しない状態です。そのため、図などで表現することができません。

あえて、表現した場合、円で表現するしかありません。その円でさえ、円周を描いている縁があるわけですから、正確に表現されたとはいえません。

そののち、「混沌」が現れました。「混沌」は大嵐が吹きすさんでいる状態です。このときはまだ「陰」も「陽」もない状態です。

「混沌」が徐々に収まり、パッと開きます。これを「混沌初開」といいます。

このときもまだ「陰」も「陽」もない状態です。この状態を「無極」と呼びます。

この「無極」の状態から、「陰」と「陽」が分かれ出て、「太極」の状態に移ります。

そのとき「陰」と「陽」が生じていますが、まだ一体です。

この状態を表したものが太極図です。

そののち「太極」から「陰」と「陽」が分離した「両儀」になります。

「両儀」はさらに分かれて「四象」となり、「四象」が分かれて「八卦」となり、今日の万物になったとされています。

したがって、万物はその根源である、「陰」と「陽」の両面を内在しています。

 

 

 

 

6.私見

陰陽論は、非常に抽象的なようにも思えます。宇宙の生成の過程ですが、私はときどき、これは生命の誕生の過程に似ているように思います。

卵子が受精して、受精卵になります。受精卵はやがて卵割が始まります。それは、一つの受精卵が2つに分割し、その2つが4つに分割、その4つも分割し8つになります。

もちろんそれ以降も卵割は倍々で進んでゆきますが、8が基本なのかもしれません。

卵子が受精して、受精卵になり、卵割が始まる前は、きっと宇宙の嵐にも似た、原子核融合にも近いとてつもなく大きな変化が生じているのではないでしょうか。

 

私がこの陰陽論に出会ったのは、30数年前です。その後しばらくほおっていたのですが、漢方医学を勉強する際にまた勉強いたしました。

ここ10数年はいろいろな体験の中で物事すべからず、陰と陽があるのだなあと感じるようになってきました。

この陰陽論は、きわめて単純なため、簡単に頭で理解できますが、それを体得するには、やはり一定の年月がかかるようです。